がんや糖尿病などの慢性疾患において西洋医学の特性を生かした上で、病だけではなく心身全体を診ながら個人の状況に応じた補完的な治療を行うのが統合医療です。具体的には漢方、鍼灸療法、ヨガ、気功、運動療法、アロマ、温熱療法、食事療法なども取り込んで、一緒にやっていこうということです。なぜ病気が起きたか原因を考え、これらの療法を施すことで痛みを抑えたり、免疫力を高めたりして生活の質の向上につなげます。
ところが西洋医学から見ると、これらは「科学的根拠がない」と批判が出てきます。現代の政府は西洋医学を基本として推し進め、それ以外の東洋医学などは蚊帳の外に置かれています。そういった背景から科学的でないと信用しない風潮が出来上がっていきます。日本では国立、私立大学を合わせても、これらの療法で教育をやっているところは数校しかありません。しかし、大阪のある大きな病院の産婦人科では、体外受精をした後に統合医療を施して人間の自然治癒力を高め、大きな効果を上げています。がん治療においても、私立病院では副作用軽減のために取り入れるところも出てきました。これらの療法に関して米国は20年以上進んでいると言われています。米国では年間1億円以上の予算がつくなど、研究に力を入れているのです。1人の患者が治療するのにいろいろな選択肢があることが大切になります。慢性疾患の患者一人一人に合わせた治療を提供し、専門的立場でアドバイスできる場を設けるためには医療従事者が認識を深めていくことが必要でしょう。